概要 |
2020年の東京五輪へ人材需要が高まる物流業界。人材確保・定着に詳しいロジクエストの清水一成代表取締役は、業界で一般的な中途採用に限定せず、「教育面で体制整備や若者に合う工夫を行い、新卒者を採用することが重要」と話す。(熊田 安那) 人と組織に関する研究機関パーソル総合研究所によると、物流、建設業界は東京五輪に絡み、計88万人の人手不足に陥るとされる。物流は力作業が多い反面、機械化や自動化に対応できる資金力を持つ中小企業は少ない。そこで「中途採用だけに絞らない方がいい」と清水代表取締役。「新卒で他業界に入社し3年以内で辞めた第2新卒も含め高卒、大卒などの新卒を1人でも多く雇用し、育てる文化が重要」と話す。 若手採用が進まないと現場の平均年齢が上がり仕事が回らなくなる。人手不足倒産が相次ぎ、約6万2,000社の運送企業も2分の1ほどになるという。 新卒採用に向けては、「教育環境の整備が欠かせない」(清水代表取締役)。厚生労働省の調査を基に、運送で多い中高卒、短大卒の新卒入社のうち3年以内の離職は5割程度いるとみて、3年間の研修プログラムの必要性を強調する。運賃計算だけでなく、会話やパソコン入力の方法も教える。大型車やフォークリフト免許を取らせて技術を磨かせる。キャリアプランの提示も大切だ。 例えば、東北で物流センターを数ヶ所構える業務用食品専門商社は訳10年前から、ビジネスマナー教育やフォークリフト免許取得に向けた指導など3年間の教育プログラムを展開。新卒者が定着するようになった。 だが、新人教育を担うべき35~45歳の中堅社員に、指導力が不足していた。中堅には上司の指導を体で覚えた人も多く、若手に向けて求められる映像や写真を使った体系立った教育を受けていないケースも多かった。この食品商社は外部講師を招き、中堅社員教育にも注力するようになった。中堅の社員は業界に多く共通する悩みでもある。「まず彼らが教えられる人になるための物流教育が必要」と清水代表取締役。輸送、保管、荷役などを行うための知識や実務能力を評価するロジ検定の受験を勧める。 若手と意見交換の場お勧め 環境が整ったら次は、勉強が苦手な若者でも参加したくなる工夫。退屈しがちな座学に加え、新人とベテランが意見交換ができる場もいい。「一人一人が十分話せる1班5~6人が理想」(同)。 また他社の施設見学会を行う企業も。都内の百貨店物流子会社は約5年前から年1~2回、庫内の自動化や物流改善に注力する3PLやメーカー倉庫を見学させている。「見学会での学びを生かした改善提案で若手のやる気が向上。定着に繋がっている」(同)。 |
輸送経済新聞 2019年1月1日掲載 |
社内の人財育成の具体策
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