概要 |
前回、3つの質問で現場で働く人の「人生で抱える問題」や「人となり」や「今勤めている会社に対しての本音や問題点」が見えてきたことをご紹介しました。 特に「今勤めている会社に対しての本音」を聞き出すことは簡単ではなく、時間がかかるのですが、本音を聞き出すことで今の現場の問題点があぶりだされるのです。一般的なコンサルタントなら大抵、ヒアリングシートなどを用意してきて、ありきたりの質問を投げかけ、時間をかけずに簡単に済まそうとします。でも、それでは建前の話だけで終わってしまい、誰も本音を話さないので、現場の問題点が見えてきません。人財定着のための手の打ちようが無いのです。 人財育成の方針として、ご縁のあった企業様を「生涯の顧客」として指導しようと思っています。5年、10年と長いスパンでその人をどうやって育て、定着して長く働いていただけるかを考えます。研修を1回や2回やった程度では、本音が見えません。何年にもわたる研修や改善プロジェクトを通して話をし、場所を変えて一杯飲みながら、色んな角度から現場で働く人の「人生で抱える問題」や「人となり」や「今勤めている会社に対しての本音や問題点」を見いだすようにしています。 残念ながら、調査した結果、私のようにジョブホッパーのごとく5年も同じ会社にいないまま、転々と転職を繰り返してきた人が多いという実態に突き当たりました。何だ、自分の人生と似ている人が多いな、と共感も覚えました。生まれた時代背景によって、うまく希望の仕事に就けた人もいれば、そうでない人もいる。たまたまボタンを掛け違えて、一度の転職で失敗し、うまくいかないまま諦めている人も相当数いることも知りました。 ただ、そんな現場で働く仲間に向けて、どこかで、人生を変えるきっかっけをつかんでほしいと思っています。 人は、ただ年齢を重ねても成長はしません。でも、幾つになっても「自分で変わりたいと思った時から、人は変わっていくことができる」と信じています。 なぜなら、多くの運送・物流現場で教育指導していく中で、変わりたいと願った人が、自分の努力で変わってきているのを目の前でたくさん見てきているからです。出世した人もたくさんいます。これまで改善に取り組まなかった現場で、自らリーダーとなって改善に取り組み、成果を出している人もいます。 自分がその会社で働く目的(夢)を明確にして、そこに小さな目標を設定して、諦めずに自分をコントロールする方法を身に着けて欲しいのです。 運送・物流現場の人財育成は、組織のリーダーから教育すべきです。運送・物流現場の中間管理職は、ほとんどの企業で「再教育」を受ける機会がほとんどありません。入社時はそれなりに研修があっても、入社して5年、10年も経つと、現場の仕事に追われて、外部のセミナーにすらほとんど参加していないリーダーが多いです。 運送・物流現場で働く仲間を年間で1,000人以上は教育するのですが、名刺も持っていない、メールアドレスなんて持たされたこともない、といった物流センターのマネジャーもたくさんお会いしました。 その中で、運送・物流現場のリーダーの特徴は、大きく2つに分類できることもわかりました。 ①自分が現場で学んだ仕事を教えたりする経験が少なく、現場をマネジメントする技術を学べないまま、次々と転職していって、30代~40代になっている層。 ②1つの職場で10年以上働いているが、役職もつかない、部下も入ってこないまま、30代~40代になっている層。 このような、現場を管理するリーダークラスに、もっと「再教育」に取り組んで欲しいと多くの運送・物流企業の経営者にお願いしています。現場のリーダーがしっかり教育を受けて学べば、現場の離職率は下げていくことができるからです。 問題は、運送・物流現場の最前線で日々起こっているので、現場の人と管理するリーダーの考えが違っていると、一生懸命に汗水たらして頑張っている仲間のモチベーションが上がらずに、やる気もなくなり、辞めていってしまうのです。 現場の最前線の人たちの悩み、苦しみの中に人が定着しない問題の解決の糸口があるということをもっと認識しなくてはならないと考えます。 |
物流ニッポン 2019年8月6日掲載 「人財」育成の現場から ㊦ |
物流人財育成の進め方
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