物流ニッポン 連載記事「人財育成・定着◆実践セミナー⑮ コーチング 聴く力 持っていますか?」 |
前回は、コーチングにおけるメンバーへの指導法のポイントについて解説しました。 「個別対応」と「話しやすい環境づくり」の2つが要点ですが、 メンバーの能力を引き出すうえで特に心得ておきたい点がさらにあります。 それは、「相手の話の聴き方」と「質問の仕方」です。今回はこれらのポイントについてお話します。 ■“アクティブリスニング”のすすめ コーチングや指導というと、リーダーはメンバーに対し一方的に指示を出せばいい、 それが的確な内容ならなおいいと思いがちです。 ですが、普段の生活や仕事というのは、相互のコミュニケーションによって 成り立つわけですから、 きちんと指示を出しさえすればそれでいいというものではありません。 なぜなら、出した指示が正しく実行されるには、 指示の内容をメンバーが正確に把握していることが前提だからです。 出した指示に対し、メンバーはどのように受け止めたか、 質問や意見の内容はどうか、いわば“聴く耳”― 聴きとる能力を持ち、 それに応じた対応をとることによってチームとしての仕事が上手くいくのです。 つまり、“聞く(hear)”と“聴く(Listen to)”とでは、 その意味はまったく違うわけで、もちろんコーチングにおいては、 相手の言葉に注意を払って、その思いや意識をしっかり受け止める、 後者の“聴く”の方を重視します。これを「アクティブリスニング」といい、いくつかのポイントがあります。 まずは、相手の話を聴くときには、その内容を自分が しっかり受けとめていることを相手に伝わるようにきちんと リアクションすることが大切です。そこで聴くときのポイントとなるのは、 『あいづち』、『うなずき』、『繰り返し』等であり、 これは相手に対する礼儀やコミュニケーションの基本でもあります。 また、たとえ相手の話に同調できない場合でも、頭ごなしに否定するのはNGです。 「そんな風に考えたことはなかったなあ」と言い替え、 そこから正しく理解してもらうための話へと展開する工夫が必要です。 ■問い詰めるのではなく、思いを引き出す 物事の理解を改めてもらったり、業務の状況を確認したりする際に、 相手に質問することがよくあります。この“質問”のスキルは、 数あるコーチングスキルの中でも非常に重要なテーマです。 それは、適切な質問の仕方により、メンバーから新たな情報やアイディア、 解決策、意欲などを引き出すことができるからです。 たとえば、チームの活動においてある問題点が生じたとしましょう。 まずリーダーは、その原因を探ろうとしますが、往々にして見られるのが、 問題の当事者を問い詰め、責めるような行為です。ここでは、 『人』と『事』を完全に分けた客観的な対応が求められ、人を責めずに問題点を究明していく姿勢が肝要です。 さらに、メンバーに対する質問の仕方も大切で、よい質問により、 相手の意見ややる気を有効に引き出すことができます。そのためには、 質問の仕方のレパートリーを増やして、普段から意識して使ってみることをお勧めします。 具体的なレパートリーとしては、「YES/NOクエスチョン」と 「オープンクエスチョン」の2つがあります。前者は、相手が「YES」 もしくは「NO」で答えられる質問の仕方であり、後者は、 業務の状況説明や自らの希望・考えなど自由に答えられる質問の仕方です。 相手の心理や問題の状況に応じ、これら2つの質問の仕方を効果的に使い分けることで、 業務の進展や問題の解決に有効な答えを引き出すことができます。 質問の仕方というテクニックを身につけるだけでも、確実にコーチングスキルがアップします。
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