概要 |
JR東日本の子会社JR東日本スタートアップ(株)は、6月に水産物の卸小売りを手掛ける(株)フーディソンと連携し、新幹線を活用した鮮魚輸送の実証実験を行った。新幹線、フェリー、トラックを利用した鮮魚輸送は全国初。鉄道やバス車両の空きスペースを利用した貨客混載が活発化している。こうした貨客混載でドライバー不足や物流効率化に対応し、輸送のスピード化も図られようとしている。 午後3時には届けられた 実験は6月11日から21日まで行なわれた。11日の午前12時に新潟県佐渡市の佐渡沖で水揚げされた生の甘エビは、朝の午前7時に甘エビは最高時速約80kmで進む旅客用の水中翼船「ジェットフォイル」で新潟港へ輸送。その後、JR新潟駅で上越新幹線「とき」で終点の東京駅まで移送し、午後4時すぎに同駅から品川駅まではJR東日本物流のトラックで配送。トラックで品川駅の鮮魚店「sakanabaccaエキュート品川店」に午後3時には届けられた。 鮮度の落ちが早く、生で出荷することが難しい海産物を、獲れたての状態で首都圏に届けることが可能となった。 市場関係者によると、両津港から首都圏まで輸送に1日以上かかるといい、「甘エビはプリプリした新鮮な食感を味わいたいなら輸送は速いに越したことはないあ」「魚介類を新鮮な状態で届けられれば漁価の向上に結びつく」と講評だった。 同じく店で売られていたウニも同じく、新幹線で岩手から運ばれてきた。岩手県宮古市三陸沿岸で塩水加工した生ウニは、岩手県北バスで盛岡駅に届けられ、東北新幹線で東京駅に輸送。こちらもJR東日本物流が品川駅まで移送した。 水揚げできなかった場合、運ぶことが不可能 実験で使ったのは、車内販売のワゴンを入れる一畳ほどの倉庫。 最近は、車内の飲食は、弁当や飲み物などを「エキナカ」店舗やコンビニで購入してから乗車する客が増えていることから、車内販売は売上が減少している。その倉庫の空いたスペースで輸送しようという試みだ。 JR東日本スタートアップの担当は「漁などの関係で運べなかったにもあったが、水揚げが行なえた日は、全て水揚げを行った当日に輸送を行うことができた。ウニ7や甘エビは車内販売をするために輸送しているわけではないため、荷物を置くスペースが限られていることが現状の課題。 また漁の関係で、ウニや甘エビを水揚げすることができなかった場合は、運ぶことが不可能となるも課題のひとつだ。現在、鮮魚を新幹線で輸送する予定はないが、今後も鮮魚の新幹線輸送を検討していきたい」と説明。 フーディソンの担当は、「これまで鮮魚を水揚げする所から、店頭に並べるまで丸1日かかっていたが、新幹線輸送では当日の早朝に獲れたものを、その日のうちに店頭に並べることが可能となることが大きなポイントだ。 新幹線輸送の実用化は現時点では未定だが、今後新幹線での鮮魚輸送が実施される場合、新幹線利用にかかる費用、水揚げから新幹線まで運ぶための輸送手段が課題となる。また大型の魚介類などは、スペースの都合上輸送ガム図画しいと思う」と話した。 プレミアム品なら実現の可能性 物流コンサル会社・ロジクエスト株式会社の清水一成社長は新幹線輸送について、「人が乗り降りする時間に荷物を積み込みのは難しく、専用貨車が要る。新幹線が営業走行しない深夜0~6時の時間帯に、集配業者が利用するJITBOX(1.1m×1.1m×2.0mのローラー付きボックス)を新幹線で運べば、16両編成なら最大640個を運べる計算。 これは10トン車37台分に相当する。新幹線輸送には、地方の生産者の販路拡大においても意味がある。足のはやい、日本各地で地元で消費されてしまうような付加価値のつく商材に限られる。また、東京駅に到着後の物流の仕分の仕組みが必要。東京駅到着後の、即仕分け、即配送の『高性能な物流センター』が必要になる」と話す。 鉄道やバス車両の空きスペースを利用した貨客混載が活発化している。貨客混載は宅配会社が山間地などのバス路線や鉄道を活用して宅配貨物を運ぶケースからスタートしたが、最近は、たとえば京王電鉄が高速バスのトランクを利用して朝獲りの産地直送野菜を輸送するなど、長距離輸送インフラを活かした活用方法が広がりつつある。 |
物流新時代 2019年8月19日掲載 |
貨客混載が加速していく!
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