概要 |
■何気ない一言 あいさつは「自分のため」に行うものですが、それによって相手も「良い影響」を受けます。つまりお互いに良い関係を築くことによって、周辺の人間関係も円滑になると考えられます。 ということは、あいさつは自分の気が向いた時だけすれば良いというものではありません。また、形式的なものであってもいけません。そもそも、あいさつというものは、周囲の人々や対面する相手への「礼儀」であり、お互いの存在を認知し合うきっかけづくりの行動と言えるのでしょう。 例えば、朝、出社して「おはようございます」とあいさつします。これに対して、職場の皆さんからも、「おはようございます」とか「おはよう〇〇さん」と返事が返ってきます。その時、皆さんは相手のことを思っているはずです。 我々人間は、互いの心が通い合っているか、本能的に読みとる感性をもっています。あいさつで自分の気持ちが相手に通じだと分かれば、お互いの心の状態がより良いものになります。 それは、ほんの一瞬の何気無いコミュニケーションかもしれませんが、相手の心理は大きく違うはずです。 だから、あいさつは大切なのですが、今までキチンとできなかった人ができるようになるには大きな勇気が必要です。「おはようございます!」と皆に向かって元気良く言える職場環境でない場合は、人から何かをしてもらった時は必ず、どんな些細なことでも「ありがとう!」の言葉を習慣化すると良いでしょう。これは感謝を示す言葉ですから、相手の心に響きやすいあいさつと言えるでしょう。 ■心変われば… 何年か前にまりますが、『夢をかなえるゾウ』(水野敬也著)という小説が話題になりました。自己啓発本として高く評価されており、ドラマ化もされましたので、ご存じの方も多いと思います。そのストーリーを簡単に紹介します。 主人公は、何をやっても長続きしない三日坊主のサラリーマン。ある日、インド旅行で買った置物に「人生を変えたい」と叫ぶと、次の朝、ガネーシャという象の姿をした神様が現れ、夢を実現するための課題を次々と出してきます。 これらの課題を実践し、身に着くまで継続します。自分が変わることに期待しているうちは良いのですが、時間が経つと「自分は変われない」と思い始めます。同書では、「自分は変われない」という気持ちがいつまでも続くことを変われない理由とし、実践を継続することの大切さを強調しています。 ですが、あえて「変わる」という意識を捨て去り、ただひたすら習慣として継続していったとしたらどうでしょう。習慣は「第二の天性」と言われますが、学んだことを繰り返し実践していると、自然に良い習慣が身に着いてくるものです。 つまり、「習慣」とは、良きにつけ悪きにつけ、知らぬ間に本人の身に着いてしまうものと言えるでしょう。19世紀のスイスのアンリ・フレデリク・アシエルという哲学者は「心が変われば態度が変わる。態度が変われば人格が変わる。人格が変われば人生(運命)が変わる」と言っています。 変わろうという意識を動機にして、生活の中で習慣化すれば、それは次第に「自分のもの」になってくるのです。 ■思いは伝わる 結局のところ、あいさつの本質は、自分の心を伝える行為に他なりません。心が無ければ継続することができませんし、いくら心で思っていても、キチンとわかるように示さなければ、相手に伝わることはありません。あいさつをする時は心を込めて、形にし続けることで、初めて自分の「大きな財産」になるのです。 時には「あの人、ちょっと苦手だなあ」という相手もいるでしょう。あおう思いながらあいさつをすると、相手の人もあなたの心情を何となく感じるものです。それでは意味がありません。あいさつがただの形式になってしまうと、習慣化することもできなくなります。 これは京都の老舗旅館「柊家」で仲居として60年間勤めた故田口八重さんの言葉ですが、「人に会う仕事は、会った時に『あの人嫌だ』と思ったらこっちの負けだ。自分の土俵で仕事をするためには、会った時、相手の良いところを何でもいいから見つけなさい」と言っています。 相手に対する思いは、必ず自分に戻ってくるものです。「心は鏡」という気持ちを常に持って、あいさつすることが礼儀と言えるでしょう。 |
物流ニッポン 2019年11月26日掲載 人財育成・定着◆実践セミナー③ |
あいさつの基本を学ぶ
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