ロジクエスト株式会社 講演 メディア掲載

概要

■物流の商品価値
 前回までは、あいさつを生活や仕事の中に習慣付けることの大切さや意義について話しました。お互いに心を通わせることで人間関係が円滑になり、特に、仕事においては、満足のいく結果を出すための重要なポイントと位置付けることができます。

 今回からは、運送・物流現場におけるCS(顧客満足)の推進について話しています。
 
 ではまず、顧客が運送・物流に期待することは何でしょうか?その前に、「運送・物流の商品価値」について考える必要があります。運送・物流の現場において、商品価値を高めるというのは、顧客から商品を預かるだけではなく、その商品の価値や取引上の利便性を高める行為を指します。その代表的なものに、物流センターで行う流通加工(組み立て、検収、検査、ラベル貼り、値付け)の作業です。
 
 物流の領域において顧客の満足度を高めるということは、顧客に満足してもらうために、何をどのように提供していくかを考え、それを実現するための仕組みをつくり上げることが大切になってきます。
 
 今の時代、昔と違ってモノさえあれば何でも売れるというような、いわゆる「プロダクトアウト」的な発想は通用しなくなりました。今は、あらゆるモノやサービスがあふれている時代と言ってもいいでしょう。そんな時代ですから、全ては顧客起点による「マーケットイン」の発想を基盤とし、顧客のニーズの実現や商品価値の向上を原点にビジネスを推進していく必要があります。
 こうしたCSや商品価値への認識は物流でも同様です。

 「倉庫があるから商品を保管してください」「トラックがあるから商品を運びます」このようなセールスの仕方は、あくまでも、プロダクトアウトの発想に過ぎません。「顧客はどのようあ出荷の仕方、配送の仕方を求めているのか」「荷主会社の取引先は、仕入れた商品をどのように販売したいと考えているのか」これがマーケットインの志向に立った、物流の商品価値向上の在り方と言えるでしょう。


■ CSと事前期待
 顧客の満足度は、運送・物流サービスを受ける時の「期待」と受けた後の「結果」や「成果」で決まります。期待と結果関係について、図1に表してみました。これらの関係の中で注目して欲しいのは、③の期待と結果がイコールの場合です。顧客にとって期待通りの結果は、あくまでも「当たり前」に過ぎません。特に、差別化が困難な商品・サービスにおいては、期待を超えた対応や結果こそ、顧客からの満足や高い評価を得るためのポイントと捉えることができるのではないでしょうか。
 
 このように考えると、顧客の「事前期待」を起点とし、自社の運送・物流サービスの現状や実際と今後の方向性について常に検討することは、ビジネスの基本と言えるかも知れません。
 
 しかし、顧客の事前期待を見定めることはなかなか困難です。例えば、次のような現場の状況に心当たりはありませんか。
 1 顧客のニーズやライバル会社のサービスレベルを把握できていない
 2 顧客満足度について調査・分析すること無く、闇雲に頑張っている
 3 顧客の満足度を高めるための方向性は明確だが、どこまで頑張ればいいか評価尺度が明確でない

 なぜ、このような状況が発生するのでしょうか。その根本的な原因を図2に示しました。

 まず、顧客ニーズや市場の状況は常に変化しているとということ、それに伴い競合のサービスレベルも上がり、顧客の期待値は時間とともにどんどん膨らみ続けていく状況がうかがえます。

 したがって、原則として企業は、常にマーケットインの視点に立ち、CSを上げ続けなければ顧客の期待に応えたサービスレベルを維持することができないのです。

物流ニッポン 2019年12月6日掲載 人財育成・定着◆実践セミナー④

物流ニッポン『物流産業新聞社』