CS向上のための手法として、“見える化”による現場力向上の観点からCS推進の手法を検証してきました。
これまでのおさらいをすると、次の3点にまとめられます。
第1に、問題解決の第一歩は問題発見にあり、発見されない問題は永遠に解決できないこと。
第2に、問題発見を効果的に行うための仕組みが“見える化”であり、タイムリーに問題が見えれば、
解決の手段が容易であること。第3に、工場だけではなく、営業も物流の現場など、
企業活動においてはあらゆる問題を“見える化”する必要があること。これらの点を踏まえながら、
今回は現場の見える化の手法をさらに深く堀り下げていきたいと思います。
■見える化には徹底したこだわりが必要!
前回も代表的な事例として紹介しましたが、トヨタ自動車や花王といった強い企業の現場力へのこだわりは凄まじく、
執念をもった見える化に取り組んでいます。
それは、「見せよう」とする意志を全面に出し、単に“見える化”というよりも、
いわば“見せる化”に相当するものです。しかも、社員一人ひとりの自主的な活動により、
“見える”ようにする知恵や工夫が現場の各所に盛り込まれています。
トヨタ自動車の元社長の渡辺捷昭氏は次のように言っています。
「企業が成長している時は問題点が潜在化して見えなくなる」と。
渡辺氏は、こうした理念を前提に、開発や調達、生産、販売など、
各部門が抱えている問題の兆候を“見える化”し、
何が足りず何を補強すべきなのかを明確にしてきたのです。
■見える化は“両輪”によって成り立つもの
現場だけの努力では、見える化の方向性を定めることができませんし、
本社や経営管理側からの指示だけでも本当に生きた見える化は実現しません。
すなわち、企業の成長にとって有効な見える化を推進するには、
図表1に示したように、現場起点の「自律の見える化」と企業全体の方針としての
「管理の見える化」という、“両輪”によって成り立つものです。
前者は「現場が自分たちの問題解決のために自主的に行う“見える化”」であり、
後者は「本社が経営管理、事業管理のために行う“見える化”」なのです。
現場力の向上において最も重要なキーワードとなるのが“自律”という考え方です。
自律の文化の確立により見える化こそが最適なオペレーションの基盤であり、
自律の見える化なしに管理の見える化だけを強化しても真の見える化は定着しないと考えられます。
最近、“自律経営”という言葉をよく耳にします。
これは、社員と経営者を単なる労使の関係で捉えるのではなく、
「働く者すべてが、お客様や取引先、そして社会のために
自律的に考えて行動する事業運営、経営の形態」を意味します。
CSや現場力強化における、有効な人材マネジメントの手法として
大きく注目されていることから、やはり、
社員一人ひとりの存在価値をいかに高めていくかが、重要なポイントになるのです。
■コミュニケーションによる現場の見える化の手法
次に、現場の見える化の具体的な手法について解説します。
これは図表2に示したように2つのタイプがあります。
ひとつは、「集中型」による見える化です。3人の担当者がいるとしたら、
“コントローラー役”の人が彼らを統括しお客様に対応します。
つまり、担当とお客様の間にコントローラーが立ち、
全体の見える化を集約していく手法です。もうひとつは、
「分散型」の見える化であり、担当者の相互連携の元、
担当者と顧客が1対1ではなく、相互にサポートする方法です。
これにより、取引内容やお客様との関係を全体が把握することができます。
手法・形態こそ違いますが、両者にはひとつの共通点があります。
それは見える化ということへの「共通意識」をもっている点です。
同じものを見ているからといって、皆が同じ認識をもつとは限りませんし、
多くの情報を入手できたとしても共通認識をもって把握していなければ、
現場改善にもお客様サービスにも生かされません。
多くの情報は個別に扱うのではなく、他者の意見を交え、
“翻訳”して理解する“場”あるいは“仕組み”を設けないと
「共通認識」にはなりません。
したがって、情報共有を共通認識に変えるには、
社員相互のコミュニケーションが大きな要素になるといえるでしょう。
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