物流ニッポン 連載記事「人財育成・定着◆実践セミナー⑪ 人への投資惜しまず」 |
これまで、運送・物流現場の人財定着のために、挨拶にはじまり、CS推進のために必須と考える現場力アップおよび見える化の手法について様々な角度から分析してきました。 これまでのお話の総括としては、まず“現場力”とは、現場が主体となった自律的問題解決能力の醸成によって確立されるものであり、「現場の問題をチームで解決する」には、人財育成が最大のカギになるということです。次いで、“見える化”に関しては、物流現場で発生する問題の多くが「見えていない」ことに由来するため、問題発見の認識を出発点に常に見直しをかける姿勢が重要であること。また、現場と会社全体との連携を図るには、社員間のコミュニケーションがポイントになるという点でした。 以上のように見ると、企業の評価や価値は、その企業を構成する社員一人ひとりの意識の問題であり、最終的には、“人間としての生き方”に問題の本質が求められるのではないでしょうか。 そこで今回は、投資家の神様といわれるウォーレン・E・バフェット氏と元楽天イーグルスの野村克也監督、お二人の人生哲学から人間形成の極意を改めて見つめてみたいと思います。 ■何事も“自分に投資する”という意識を持とう ウォーレン・E・バフェット氏は、「あなたの最高の財産はあなた自身です」といっています。すべての行動はそのまま自分に返ってくるもので、生き方として最も重要なのは、「自分に投資するという意識を持つこと」と語り、さらに成長のポイントとして以下の3点をあげます。 1.外へ飛び出して、多くの人と接するべき。 2.成長を余儀なくされるような環境に自ら身を置くべき。 3.同じ悩みを抱える者たちと知り合うこと。 自分の人生を振り返ると、誰でも「あの時にもっと頑張れば良かった」と反省することがあるものです。「後悔先に立たず」であり、この点についてバフェット氏はとても説得力のある寓言を延べます。 「たとえば今、あなたが16歳で、どんな車でも好きな車を買ってもらえるとしましょう。ただし一つだけ条件があります。それは二度と車を買い替えることはできず、一生、その車に乗り続けなければならないということです。さて、買ってもらった車をあなたはどうするでしょうか。 熱心に何度も繰り返しマニュアルを読むでしょう。今の頻度の何倍もオイル交換やメンテナンスを行うでしょう。事故に合わないように安全運転に努めるでしょう。自分のこともそのように扱いなさいということです。そうすればきっと素晴らしい人生が開けます」 バフェット氏のいう車とは、まさしく自分自身です。このお話から、ほとんどの人たちは、自分の持つ能力を最大限には発揮していないことを反省し、同時に、これからの人生、自分次第でどのような人間にもなれることに気づくのではないでしょうか。 ■人間的成長なくして技術的進歩なし 元楽天イーグルスの野村克也監督は、プロ野球チームの監督としての手腕もさることながら、人財育成やリーダーシップ論のお手本として各界から大きく評価されている人物です。野村元監督は、人間には思うようにならないことが“2つ”あるといいます。一つは「人間一人では生きていけない」であり、もう一つは「自分の思うようになることはほとんどない」です。 誰でも自分の思うようにしたいと考えますが、なかなかそうならないのが現実です。そこに理想と現実のギャップが生まれてくるわけですが、「だからこそ努力が必要である」というのが野村元監督の主張です。“努力”とはすなわち“チャレンジ”であり、チャレンジしても成功するとは限りません。ですが、“失敗”を経験すればこそ、今までの考え方、やり方を改めることで、成功の道が開けるのです。 では、野村監督のいう努力・チャレンジとはどのようなことでしょうか。たとえば監督は、「プロ野球選手でもアマチュア選手に教えられることは多い」といいます。それは技術レベルの問題ではなく、一流のプロ選手ほど、「何でも吸収しよう」という向上心が強いそうです。つまり、相手から学ぼうとする姿勢が努力やチャレンジであり、それによって自然と自分自身の態度も変わり、いわば教えを乞う立場として、相手を尊重するようになります。人間的に成長できる人は、相手の優れたところを瞬時に見抜き、吸収する能力に通じていると思われます。だから、技術的な成長も早いのです。 最後に、運送・物流業は採用した後の教育をほとんど行っていない、「再教育」をしていない企業が多いのが実態です。また、現場のドライバーも管理者も勉強嫌いな方が多いので、社内での座学だけの講義は飽きてしまって続かないのです。もっと、外に出る機会を作り、運送・物流業界の他社のメンバーと一緒に学ぶ、教えあう場が必要ではないかと私は考えます。
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