物流ニッポン 連載記事「人財育成・定着◆実践セミナー⑱ 社内の人間関係 円滑に ~思いやりでチーム力アップ |
挨拶の重要性については、これまでに何度もお話してきました。 もちろん職場でもそうですが、私たちは一人で生きているわけではありません。 その日初めての人と人とのコンタクトを、まずは挨拶で示し、 相手への思いやりを行動で表すことが、 コミュニケーションアップの一番のポイントと考えます。 ここで今回は、特に社内の人同士の円滑な 関係づくりに不可欠な“接遇”という考え方と、 相手への思いやりを積極的に示す“ポジティブストローク”について解説します。 ■企業は人なりー 人財の能力は“接遇”で決まる 「企業は人なり」という言葉をよく耳にします。 企業や組織の成長は、そこにいる“人”にかかっていますので、 まずは、仕事をする人材を大切にし、育てていくことが、 経営力ならびにチーム力強化のベースになるという考え方です。 企業や組織において、いかに“人づくり”が重要であるか。 このテーマを分かりやすく説明するために、まずはご自身が、 ピカピカの社会人1年生になったとご想像ください。 新入社員なら誰しも、「先輩からいろいろなことを教わりたい」、 「皆の役に立てるよう早く一人前になりたい」と高いモチベーションを持っているものです。 ところがあなたが入社した会社が、社員の人たちの コミュニケーションが希薄で、先輩たちは やる気を見せることもなく、しかも右も左も分からない 新卒社員の自分を親身に指導してくれない人たちばかり だったとしたらどう感じるでしょうか。
最初の1、2週間は「それでも一生懸命に頑張ろう」 という気持ちを維持できます。しかし、1ヵ月も経てば 「自分の大切な人生をこの会社にかけていいのだろうか」 と大きな絶望感を抱いてしまうでしょう。 このような結果に至った原因は、とにもかくにも 企業・組織の体質にあり、それを構成する先輩社員たちの 思いやりのない対応に求められるのではないでしょうか。 人を取り巻く環境は、成長を決める重要なファクターです。 人材の能力を高め、発揮してもらうには、 企業・組織を構成するメンバー一人ひとりの意識と気風が大きく作用します。 チーム力アップのために、“人財”の育成は重要な要素であり、 先輩社員なら、せっかく入社した新入社員を大切に育てようとする意志 を行動で示す責任があります。これに対して、そうした先輩社員の 思いを素直に受けとめ、真摯な姿勢で応えることもチームの一員としての務めです。 以上の点から、相手を思い気遣うお互いのコミュニケーションの手法が、 今回のテーマとする“接遇”の取り組みです。
■ポジティブストロークでチーム力を強化する 前回、『挨拶の3つのポイント』でも説明したように、 お互いのモチベーションやコミュニケーションを高めるには、 相手に感じたよいこと、あるいは感謝や気遣いの 心を言葉に出して積極的に伝えてあげることが大切です。 これを『ポジティブストローク』といいます。 “ストローク”とは、「相手の存在や価値を認めるような刺激」を意味します。 それは言葉だけではなく、表情、眼差し、態度、行動など、 相手に向けたさまざまな対応によって表されます。 たとえば、笑顔で挨拶をされると嬉しくなるのは、 そのストロークがポジティブなものであり、 自分の存在を認めてもらえたと認知できるからです。 逆に不愛想な挨拶や無視といったネガティブなストロークは、 自分の存在が否定されたと受けとめてしまいます。 人は誰でも自分の存在を認めてもらい、親切に対応されたり、 褒められたりすることに喜びややり甲斐を感じるものです。 そうした人間本来の欲求を満たすことは、接遇の風土を醸成し、 ひいてはチーム力の強化において大切な要素になると考えます。 なぜなら、まず、組織やチームは業務品質の向上やお客さま満足、 あるいは売り上げアップなど、 何らかの共通の目標を持って活動しています。 そして、チームを構成するのは“人”であり、 メンバー一人ひとりが、その会社で働くことの喜びや意義、 プライドを持ち、能力を最大限に発揮しようと努めれば、 チーム全体の質は高まり、お客さまに最高のサービスや満足を 提供できると考えるからです。さらにこうした考え方から、 組織・人づくりの意義として、 『CS(お客さま満足)の先にある3つの幸せ』を提起することができます。 「私たちは何のために働いているのか」― 人として日々を生きていくための 根本的なテーマをきちんと社員に説明し、 実践の場を提供できる会社は、 “社員=人の存在”に立脚したものすごく素晴らしい会社といえるでしょう。
|