物流新時代掲載 2022年12月5日(月)第三者行為災害 得意先での労働災害は自社の労災で済ますケース多い? |
1.関西のある運送会社のドライバーが今年、得意先に荷物の積込みに行ったが、 ドライバーはパレットを踏み抜いて大ケガを負った。得意先が用意したパレット が原因で、得意先に非があるのは明らかだったが、荷主からは、 「荷物を乗せる前にドライバーがパレットの状態をチェックしていなかったから、 踏み抜き事故が起こったのだ」と言われ、結局、書類上、自社の労災として 処理したという。 ★加害者も「第三者行為災害報告書」の提出 2.こうした、仕事中に起きた災害は「第三者行為災害」とされ、被災者又はその遺族は、 第三者(加害者)に対して被害に対する損害賠償を請求する権利を得ると同時に、 労災保険の保険者(政府)に対しても給付を請求する権利を得ることになる。 3.「第三者行為災害」の被害者が労災保険給付を受ける場合、諸葛の労働基準監督署に 「第三者行為災害届」などを提出し、また、事故の発生状況や賠償金の支払い状況を 確認するために、加害者にも「第三者行為災害報告書」の提出が求められる。 4.今回のように自社の労災を使った場合、国は被害者に代わって、加害者に賠償請求を 行うことになる。国が被害者の賠償請求を肩代わりすることは「求償」と呼ばれる。 5.国が行う「求償」について、大阪府労働局保険庁集課の担当者は次のように 説明する。加害者が「求償」による国からの損害賠償請求を無視した場合、 悪質と判断されれば督促や裁判、財産の差押えなどが行われることになる。 6.なお、加害者に損害賠償能力がない場合、賠償金の支払猶予や免除が行われる こともある。賠償金を支払えないという場合は、労働基準監督署に相談してほしい。 ★『相手が運送会社なら「お互い様」』 7.「また事故が起こった際に加害者が提出する「第三者行為災害報告書」には、自身が 主張する過失割合を記載することもできる。国はその主張を加味し、過失割合に応じ 賠償額を減額することもある。 8.「第三者行為災害報告書」を提出していなかった場合は、すみやかに労働基準監督署に 「報告書」を提出し、過失割合を主張したほうがよい」 前述の運送会社は自社の労災を使って、国に「求償」請求をしなかった。 9.運送会社社長、「警察を呼ばなければいけない大きな事故を除き、自社のドライバー が納品先で事故にあったとしても、相手(加害者)が運送会社なら、『お互い様』 荷主なら『泣き寝入り』ということにして、自社で処理ししてしまうこともある。 10.手間暇かけて証拠集めたり、裁判で何年ももめたりするよりも問題をスムーズに 解決できるからだ」と話している。 11.また、同社長は「第三者行為災害」の加害者にならないよう対策を施す。 ドライバーには「仕事先で自分勝手に作業を始めない」というルールを 徹底させている。待機時間が30分、1時間とかさんでくると、ドライバーは イライラして、近くに置いてあるフォークリフトに乗ったり、自車のユニックを 操作したりして、勝手に荷物の積み下ろしを始めてしまうことがある。 ★「会社に確認の連絡をいれさせている」 12.万が一こうした状況で事故が起これば、うちのドライバーが加害者になってしまう。 仮に、現場の作業員から「リフトを使って良いから、そこに(荷物を)下ろしといて」 と指示されたとしても、「現場の作業員は勝手に下しても良いと言っているが、 本当に自分がリフトに乗って荷下ろししても良いのか」と会社に確認の連絡を入れさせて いるという。 ◆物流コンサルのロジクエスト㈱清水社長は次のように話す。 「第三者行為災害をめぐって、たとえ裁判で勝っても遺恨を残すことになる。 荷主が本当に悪質で、2度、3度と同じような事故があるようであれば、 訴える価値はあります。 どのような荷主なのか?ということ見極めることが大事だと私は考えます。 少なくとも、相手側に迷惑をかけた荷主が委託先に対してきちんと対応できない ということは、取引を止めることも戦略的に運送会社の社長の仕事だと思います。」 ★トラック情報社HP http://www.shinjidai.jp/index.php
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