物流新時代掲載 2023年8月7日(月)「運送会社の値上げ」について「値上げ根拠を丁寧に説明する必要性」 |
物流コンサルタント ロジクエスト(株)の清水一成社長に、 物価高、燃料高騰の状況下における運賃交渉のポイントを解説してもらった。 =================================== 世間的には、原材料費や燃料高騰、2024年問題によるドライバー不足など 運送会社側の大変な事情は事実である。 しかし、きちんと値上げの根拠を丁寧に何度も訪問して説明する必要性がある。 そもそも、きちんと自社の経営の数字(KPI=重要業績評価指標)を把握できて いない運送会社も多いのが実態である。 まずは、自分の会社の数字を把握することが先である。 中長期的視点での取引で考えて、値上げ交渉によって、取引を断られたり、 売り上げを現状より下げたくないAランク(大口)の取引先、取引がなくなっても 困らないCランク(小口)といった取引先に分け、その上で、交渉に行く営業マンは、 トップセールスの社長なのか、幹部が行くのかを決めて交渉に臨む。 誰が説明・交渉するかで結果は大きく変わるからである。 =================================== ★『値上げ根拠の資料もなしに交渉してはならない』 交渉時の資料は、 ①外部環境の説明(原材料高騰によるタイヤ・車両維持費、燃料高騰など) ②内部環境の説明(これまでの荷主に対してのコスト削減の努力を資料にまとめる) 配送ミスが事故がない高品質な配送・時間に正確な配送・貨物保険に入っている、 コンプライアンスやSDGsなどに対応した社内体制、人財育成・教育を行っている。 荷主のお困りごとに積極的に対応できる体制など ③自社の現状の経営数値(どこまで見せるかは経営者次第。 損益分岐点売上高、売上総利益、営業利益、原材料・人件費が5%あがったら、 営業利益はどうなるのか? 中長期(3年~5年)でシュミレーションしたKPIを見せて、 これ以上はコスト削減ではどうにもならないことについて説明をする。 つまり、値上げなしでは、自社の経営が成り立たないという事を示す資料を 作成することになる。 ====================================== ★物価高、燃料費高騰の状況下で、運送会社が運賃値上げ交渉でやった方が良いことは? ①荷主に対して中長期的視点で「費用対効果(値上げの効果)」を説明する ②値上げしても大きく自社が儲かるわけではなく、会社が存続していくための 値上げをさせてもらう。 ③自社のコスト削減ではもう限界であり、このままでは、従業員の給与を上げて 行くことができず、会社が倒産してしまうことを説明する。 ④大手の値上げ率を基準にし、自社の値上げ率を説明する。 ⑤値上げによって何か荷主にプラスアルファになる点を加えて説明する。 ただ、値上げをお願いするだけでなく、荷主にとって、中長期で 輸送の効率化につながる情報や運用、ノウハウなどを提案する。 ====================================== ★①経産省等が2023年4月27日に実施した 第8回「持続可能な物流の実現に向けた検討会」において公表した 「荷主事業者の物流情報の把握状況等」 ②荷待ち時間・荷役時間の把握状況について 「把握している」荷主事業者は10~20%だった。 ③自社の輸送委託において、実運送事業者を把握している 荷主は約50% ④自社が輸送委託していない輸送事業者(下請け)の入出荷 に関しては、 取引先と輸送事業者との間の契約内容(荷積み・荷卸し、 附帯作業等)を把握している荷主は30%だった。 ★つまり、荷主が把握していないものは 請求できない!
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