物流新時代掲載 2024年9月2日(月)『物流現場の事故防止について』~いかに早くトップに事故情報を上げるか~ |
●動画マニュアル作成会社tebiki㈱(東京都)はこのほど、 「効果的な社員教育で実現、物流センターの品質向上と事故撲滅」と題した オンラインセミナーを開催した。講師は、ロジクエスト(株) の清水一成氏が勤め、物流現場の事故防止の取組について説明を行った。 1.『品質とコストはトレードオフの関係』 我々物流業はサービス業であり、徹底した品質管理が利益につながります。 品質とコストはトレードオフ(両立できない関係)です。 品質をあげようとすれば、現場の人を教育しなきゃいけない。 運送業は機械化も進んでいますが、 機械を扱う人間の教育にお金をかけていない中小企業も多く、研修しても 2、3年ですぐにやめてしまいます。 そういった企業はだんだん品質が低下し、事故を起こしてしまう。そんな事例を たくさん見てきました。 品質とは人の質です。これは特効薬や即効性のあるも 取組なんてものはなく、地道に教育していくしかありません。 労災による死亡事故を起こせば5つのリスクが高まります。 「高額な賠償」「従業員の動揺」「刑事罰」「社会の評価の低下」「業績の悪化」です。 物流業は人手不足の状況です。 人が少なければ現場の作業は荒くなります。 そして荷主からスピードを求められる。そんな状況なので、 現場の労災事故は増えている現状にあると考えています。
2.『物流現場で最も多い労災はフォーク』 物流現場で最も労災が多いのはフォークリフトです。 ここ10年間で年間2000件前後、死亡事故は30件前後で推移 しています。通販やECの物流によって出荷のスピードが上がり、 現場に余裕がないことも、フォークリフトの事故増加 につながっていると考えています。 過去5年間に発生したフォークリフトの死亡事故を見てみると 「挟まれ・巻き込まれ」「激突・激突され」「墜落・転落」「転倒」 これら全てが増えてます。
昨年、埼玉の運送業者で起きたフォークリフトでの転落事故では、 事故を起こした従業員は無免許で運転していました。 この件は、上司や会社も書類送検されてます。 また、今年の4月下旬には兵庫県の運送会社で、男性がフォークリフトの 下敷きになって死亡する事故も起こっています。 今は、事故が発生すると、SNSやネットで 拡散され会社が酷評を受ける時代です。 そうなってしまえば人が集まらなくなります。
3.『これはかつて私のセミナーに来て頂いた企業さんの事例です』 その企業は貨物事故、異品、遅延が相次ぎ、 その発生が特定の荷主に偏ったことで大問題となりました。 そこで、事故や労災が発生した時、 トップに1時間以内に報告を上げる。「1時間ルール」を作り 安全品質の徹底を図りました。
4.『いかに早くトップに事故情報をあげるか』 ポイントはいかに早くトップの社長に事故の情報を上げるかです。 事故の責任を取れるのは社長だけです。実際に事故を起こした後、どう対応していくのか。 この会社では安全体制の情報ルートの一元化を図りました。 悪い情報は上に上がってきません。悪い情報をいち早く上げられるかどうかがその会社の 存続にも関わってきます。もし隠したりしてバレたら、批判は当然大きくなります。 現場からどう情報を上げていくのかを徹底している会社の方が事故を減らしているんじゃ ないかと考えています。
5.コンサルティング先事例 私の指導先の企業さんでは2006年から「品質=人質(ひとのしつ)」をキーワードに、 現場社員の教育をされています。 お客様から何か依頼を受けた時にはっきり「はい」と返事ができるなど、基本から徹底的に 取組んでいます。 この取り取組により物流トラブルの件数が半減するなど大きな成果を上げています。 当たり前のことや単純なルールも馬鹿にせずちゃんとやるのが重要です。 そして品質事故が発生したとしても、慌てないことが肝心です。その企業さんは慌てず、 ほんの1分の手間を省かず、伝票と現品を確実に照合し、指差し呼称でチェックし、 声に出して読み上げ再確認を指導しています。
6.『パレットは15枚までは歩行者を視認』 荷役作業の労災の7割はフォークリフトに起因しています。 事故防止のためには、フォークリフトの運転席から歩行者が見えるように 倉庫内に積み上げる製品・パレット等の高さを制限する対策が有効です。 パレットの場合、最大15枚までであれば歩行者を視認可能です。 また、フォークリフトのスピードを制限するのも重要です。 事故原因の多くは荒い運転とスピード違反であり、労働安全規則では、 最高速度が時速10kmを超えるフォークリフトで作業する場合は、 適正な速度制限を定めることが義務付けられています。 最近構内では、時速10kmでも事故が多いので、時速8kmや時速6km、 場所によっては時速3kmに設定する現場も増えています。 そうした方が圧倒的に事故の数を減らせるからです。
7.「事故は動画を活用して振り返り教育が効果的」 失敗は確率の問題です。「起こした奴が悪い」で片づけると事故はなくなりません。 どうすればなくしていけるのか、実際にヒヤリハットの報告書を用いて、 ミスを起こした本人に考えさせるやり方を取っている事業者さんも多いかと 思います。 今はフォークリフトにもドライブレコーダーがつくようになりました。 これを社内教育にも活用されている現場が増えてきています。 動画を活用した振り返り教育は効果が高いです。
8.「物流現場は予測不能な出来事が起こる」 物流現場は予測不能な出来事が必ず起こる場所です。 KYT(危険予知トレーニング)は、「不安全な行動をとる人」を「安全な人」へ 変えていくための活動です。事故は「不安全状態」と「不安全行動」の2つの 危険要因が重なっておきます。 このうち、ヒトに起因する「不安全行動をなくす」ことが、KYTの目指す ところです。 このKYTを実施することで、職場に潜む危険個所を把握でき、より安全な 物流現場作りを行えるようになります。 KYT活動は安全の投資活動であり、「安全に投資する」という判断は 経営者にしか行えません。 安全は物流現場のすべての仕事に優先をします。 これは肝に銘じておいてください。
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